【 登場人物 】
湯川先生:
精神科医、内科医。都内某所で開業。陸上部OB。医療、食事、運動、モチベーションに精通。
今年度から母校陸上部のコーチとして招聘。
月城萌絵(つきしろもえ):
都内随一の進学校、東都大学付属高等学校に通う高校2年生。 父、母ともに帝都大学を卒業。父は医師で湯川の上司でもある。
学業は非常に優秀。内向的な性格。一条に対してだけ心を開いている。 容姿端麗で近づいてくる男子は多いが見向きもしない。あだ名は「東都の鏡」。
一条蘭(いちじょうらん):
月城と同じ東都大学付属高等学校に通う高校2年生。
父は外務省勤務のキャリア官僚。 スポーツ万能。正義感が強く、誰に対しても物怖じしない。
敬語を使うのは非常に苦手。衝動的に動いてしまうこともちらほら。
将来の夢は外交官もしくは弁護士。あだ名は「東都の掟」。
コンビニに売っている水、選ぶならどれ?
月城:
先生、コンビニとかに行くといろんな種類の水が売られてますけど、どんな水が良いとかってあるんですか?
湯川先生:
君たちは知らないかもしれないけど、一昔前まで水はスーパー、コンビニでは売られてなかったんだよ。水が店頭に並ぶようになった時は、多くの人が「お水を買う人なんているのか?」「お金持ちくらいしか、買わないだろう」「お水も買う時代なんて、なんて生きづらくなったんだ」と水の販売に関してかなり懐疑的、悲観的な意見が多かった。でも、そんな考えは今や一掃され、店頭で一番数多く並べられているのが水といっても過言ではないだろう。
月城:
そんな時代もあったんですね!コンビニで買うとしたらお茶かお水。お水が売っていないと困ります。水道水ってあまりよろしくないっていいますもんね。
湯川先生:
いや、そんなことはない。日本の上水道のろ過能力は非常に優れていると思う。おそらく、世界トップクラス。そのまま飲んでも問題はない。微量な塩素は混入されているけれど、これはある種の感染症を回避するためには止むをえない。ただ、古い水道管などでは鉛が使われていたりして、それが管の経年劣化とともに水の中に溶け込み、それを長期間飲み続けると体に害が出てしまう。水道管の工事はすごくコストがかかるから、まだ日本のあちこちで鉛が使われた水道管が使われてしまっている。
月城:
私のところは大丈夫かな。今度、白河あたりに調べさせないと。
一条:
あっ、あのダンディな執事さんね。いいな、萌絵ちゃん家は・・・、調べてくれる人がいて。羨ましい。先生の話しを聞いたら、安心するどころから余計に不安になっちゃった・・・・
湯川先生:
今日は一条君にいじわるばかりしてしまっているね。
一条:
ほんと、そう(一条は声をあげて笑う)。練習終わったら、先生にコンビニでお水を奢ってもらわないと。何のお水にしようかしら(笑いながら言った)
色々含まれているお水はカラダに良いの?
月城:
あっ、先生、コンビニとか通販とかで色々なお水を見かけますが、色々含まれているお水の方が体にいいんですか?
湯川先生:
水は発売当初、「水道水よりも一層濾過され不純物が少なく安全」として売りに出され、水関連事業は成功をおさめた。そうかと思ったら、今度は自らの手で色々なものを混入し豊富なラインアップを取り揃えるようになった。顔触れとしては、アルカリイオン水、海洋深層水、水素水、ナチュラルウォーター、白金ナノコロイド水などたくさんある。硬度の違いこそあれ、基本的に水が人に害を与えることはない。でも、水に色々なものを混ぜ始めると、過ぎたるは猶及ばざるが如しとなる。
月城:
何か害が出てくるんですか?
湯川先生:
そうだね。例えば白金ナノコロイド水は強い抗酸化作用が考えられる一方で、飲みすぎると肝障害などが指摘されている。せっかく色々考えて行動してもプラスマイナスゼロ、もしくはマイナスになりかねないものがあるので注意は必要だね。基本的にはお水でさえあれば、売りに出されている飲料水の種類にこだわる必要性はない。好みの判断でいいと思う。例えば、性格的に信じ込みやすいタイプ、いわゆるプラシーボ効果に染まりやすい性格の人は「シリカで美肌」を謳っているものを飲んでみてもいいかもしれない。気から病というようにプラシーボ効果も立派な治療だからね。
一条:
信じる者は救われる・・・ちょっと違うか・・・(自分で言いながら苦笑した)
月城:
カフェイン入りの飲み物を飲むと、利尿作用があるから、その分お水を多めに飲まなければならないと言われたことがあるんですか?これって本当ですか?
湯川先生:
うーん、正しいとも間違いとも言えないな。ただ言えるのは、カフェイン入り飲料を飲み始めた当初はカフェインの利尿作用により尿量が増えるけれど、連日飲んでいると尿量は以前の状態に戻る。だから、毎日飲んでいるのならそれほど気にしなくてもいいと思うよ。
一条:
あの・・・、先生・・・・
湯川先生:
どうしたんだい?
一条:
そろそろ、その・・・お水を飲んできてもよろしいでしょうか?
湯川先生:
あっ、ごめん、ごめん。もちろん。じゃあ、飲み終わったら残り3本追い込もう
一条:
今日の先生、ほんときらーい (と言いつつ小走りでフィールドの外に出た。)
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